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三島麻亜子歌集
『ゆふぐれの視座』


短歌は韻文である。韻文の言葉は、日常の言葉と位相が異なる。その位相の相異を理解でき、使いこなせる者が真の歌人と呼ばれる。季節のめぐりにそって、風や鳥や虫や樹や花が詠われる。五七五七七の韻律にのり、研ぎ澄まされた言葉で構築される世界に真の歌人の美意識と思想が輝き、耀く。
(藤原龍一郎)


・風待ちのダリアは己が緋に灼かる
 Google Earthの木の間隠れを
・姫沙羅の落花によごれなき朝【あした】
 ここにうまれて此処には生きず
・おしなべて死はみな客死、
 桔梗【きちこう】は秋の気配をさとりてひらく
・降る音は雪にもありて長編を
 ひと夜に読みし若き日おもふ
・水差しの凍【こほ】りふれあふ音やみて
 ゆふぐれの視座とらへがたしも


第2歌集
「短歌人」編集委員
2026年3月12日発行
四六判上製カバー装172頁
定価:本体2500円[税別]
 

 
藤井良幸歌集
『風の委任状』


飄々として、
誰にも媚びず、
孤高を邁進する。
海から離れても、
いついかなる時も、
思索をやめない。
独創的な作品群。


・仏蘭西のうまれと聞けり
 黒板のしらふなるときサンゴは匂う
・暑ければ象の歌など口ずさみ
 「済」のスタンプ坦々と捺す
・うるとらの語源を訊きて
 いちれつの昼白色の灯る下ゆく


第1歌集
「短歌人」同人
2026年2月22日発行
四六判並製カバー装158頁
定価:本体2200円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
岩下静香歌集
『チャイムのあとに』


子どもたちの成長、
教員としての歩み、
離れて暮らす親の老い。
さまざまな声の響き合い、
狭間には折々の〈わたし〉の
感情が揺らいでいる。
生の手触りを、歌の中に
掬いあげてきた日々。


・雨あがり窓開け放つ合奏の
 楽譜のうらを雲が流れる
・「洗濯機に行きたい」という子の話
 「ケンタッキー」のことと分かりぬ
・潟の字のつくこの町に住みかえて
 路地に迷えば小蟹に出会う


第2歌集
「短歌人」同人
2025年12月26日発行
四六判上製カバー装204頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
佐々木順子歌集
『揺り椅子』


佐々木順子さんは秋田の人。七十歳を過ぎてから短歌をはじめ、みるみる上達し、ここに第一歌集を編む。相当な高齢であるはずなのだが、老いの嘆きなどはまず見られず、音楽を聴き、美術に親しみ、古今東西の本を読む。生きるよろこびの明るいひかりが、窓いっぱいに射す歌集である。
(小池 光)


・降車ボタン誰か押すかな誰も押さぬ
 押さんとすれば誰か押したり
・遠き日のシルクロードよ
  旅の靴さかさに振れば砂こぼれたり
・画板もち写生に行くらん子らの列
  立ちて見送る知る子なけれど


第1歌集
「短歌人」同人
2025年11月24日発行
四六判上製カバー装206頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
室井忠雄歌集
『わが小園』


『わが小園』には感傷や感慨、ネガティブな物事は全くといっていいほど無い。 
(花山多佳子)
しみじみとしたうた、面白いうたが、しぜんと歌集を豊かなものにしている。 
(山下 翔)
誰にでもできそうな歌を作ることは、誰にでもできることでない。
(小池 光)
【栞より】


・秋の日の交通安全よびかけて
 小学生の鼓笛隊来る
・蕗畑とわらび畑を二か所ずつ
 つくり楽しむこの小園に
・「この猫を探しています」と自治会長
 われのところへ来る親子連れ
・八十四種の作物つくるわが農園
 米、麦、煙草のたぐいは作らず
・大人になるとずぶ濡れになることなくなって
 人生まったくつまらなくなる


第5歌集
「短歌人」同人
2025年11月10日発行
四六判上製カバー装198頁
定価:本体2500円[税別]
装画/松原 賢
装幀/真田幸治
 

 
今井聡歌集
『にんげんのかたち』


人間の素朴な行為のなかにひそむ真実。それをみずからの簡素な生活の中に見い出す。孤独感と自己対話、柔らかなユーモアと深い思索。それらが重なり、静かな余韻を生み出す。平易な言葉で深追いはせず、淡々とおだやかな呼吸を保ちつつ、多彩な視点からさりげなく繰り出される歌。ひとりの小さな暮らしを守り、「きみ」を思うやさしさには、世俗を離れて自在に生きる仙人のような雰囲気さえ漂っている。
(大松達知)


・米を研ぐ朝明けどきの涼しさは
 しみとほりけりひとりなりける
・やはらかいだいふくもちの真ん中を
 すこし押しますごめんなさいね
・わがこころ落着かせむと
 しろたへの茹で卵一つ手にとりて剝く
・いびつなるものほど味が良きなどと
 人間論に寄せて説きゐる
・石を見てじつとみてゐる
  そのうちに動き出すんぢやないかと見てる


第2歌集
コスモス叢書第1267篇
2025年11月10日発行
四六判上製カバー装172頁
定価:本体2300円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
砂川光子歌集
『具象のないさびしさに』


土道を踏みしめふみしめ
歩くとき思い出は
足の先よりくる

沖縄の光と風のなかで生み出された歌群は、孤独のうちに強く美しいものを伝えてくれている。
(佐伯裕子・解説より)


・月桃は慰霊の月の摩文仁野の
 みどりに白じろ房たれており
・目をとずるわれの視界をゆっくりと
 めぐれるひかり 思考のかけら
・うりずんの風も光もやさしくて
 われに障りなどもたらしはせぬ 


第3歌集
「未来」会員
2025年9月20日発行
四六判上製カバー装178頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
難波一義歌集
『鳥髪』


少年が故郷を離れてから
はるかなる歳月。
妻と猫との穏やかな暮らしのなか、
過去と往還しながら
呼び覚まされる喪失感。


・墨汁のねばれるごとき春の夜の
 闇を押しくる青年の胸
・妻が縫ひ吾がかけやりし白きふとんに
 横向きの猫の死にたるがゐる
・花冷えとふ言葉美し
 花冷えの街に残んの花に逢ひたり
・名を知らぬこの黄の小さき花に
 名を付けるとしたらゼンセイノハハ 
・因縁が母をははとしわれを子としたれば
 子なるわれ母を呼ぶ 


第2歌集
「笛」編集人
2025年9月8日発行
四六判並製カバー装144頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
大川匡子歌集
『ニューロンネット』


睡眠学の草分けとしての
好奇心と行動力。
慈愛に満ちた眼差しが
世界を包み込み、
定型に寄り添う。


・眠い子も目覚めている子もあるらしき
 初めての講義島の学校
・久々の日射しを浴びた布団の香
 ニューロンネットを張り拡げたり
・目薬のこぼれぬように上向けば
 昇る朝日がまなこに光る


第2歌集
「笛」会員
2025年8月11日発行
四六判上製カバー装198頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
白川ユウコ歌集
『ざざんざ』


ページを開いた瞬間、90年代から今に至るまでの爆裂にエモい風が吹き抜けてきた。
ずっとずっとこの世界にいたい。歌に溺れながら、そう思った。
(雨宮処凛)


・ローソンで「袋いいです」二十四時
 キットカットとカッターナイフ
・静岡を出でてわたしは三島にて
 産まれた人と浜松に住む
・「プーチンを抱いてあげたい」お姉ちゃん
 ザリガニみんな殺しちゃったね
・もう夢を見ない薬を出しましょう
 夕光ももいろのブラインド
・折り畳み傘のようなるさびしさを
 あの子の前で一度ひろげた


第3歌集
コスモス叢書第1247篇
2025年8月11日発行
四六判上製カバー装240頁
定価:本体2500円[税別]
装画:逆柱いみり
装幀/真田幸治
 

 
洞口千恵歌集
『芭蕉の辻』


洞口千恵さんは仙台の人。東北大学でわたしの後輩。文学部で国語学を専攻、サークルは馬術部だった。この歌集は東日本大震災と、父の死という重い主題をもつ。わたしはどこから来たか、わたしはどこへ行くか、わたしとは誰か。短歌は、その根源的にして普遍的なテーマによく答えるものとなっている。巻末の一連は青春の性愛を大胆かつみずみずしく歌って圧倒的。
(小池 光)


・海までの距離が死までの距離となりし
 仙台平野に生き残りたり
・大口氏俵氏去りし仙台を嘉せり
 われのふるさとなれば
・墓参ののちボンネットに乗り従ききたる
 精霊ばつた父かもしれず
・生れざりしおとうととふたり吹きゐしか
 水子地蔵のまへのかざぐるま
・抱きつつわれのそびらをまさぐれり
 フロントホックに気づかぬ彼は


第2歌集
「短歌人」同人
2025年8月5日発行
四六判上製カバー装192頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
早川昌成歌集
『楽想の風』


 「楽興の時」
歌人は様々な経験に向き合い、自らの言葉を奏でていく。渋谷の学生時代、卒業論文、実朝研究、教職と教え子たち、そして父親の記憶。それらを長調、時には短調で鳴らしつつ、生涯をひとつの交響楽へ編み上げようとするかのようである。ただし決して大仰な大編成曲ではない。この歌集を閉じた時、弦楽セレナーデの最終音の余韻が漂う。
 石川則夫
(國學院大學副学長・文学博士)

・楽想の風は変はりてオーボエが
 第二主題に光をそそぐ
・職退きて肩書なべてなくなりし
 我は未来を突き進むのみ
・白米とサーモンピンクと笹緑
 にほへる富山の「ますのすし」うまし


第1歌集
コスモス叢書第1254篇
2025年7月12日発行
四六判並製カバー装148頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
取違克子歌集
『われの賜物』


福岡という土地での
凪のような家族の暮らし。
穏やかな日常に起こる事柄が、
己の中の詩情に語りかけ、
かけがえのない一首が生まれる。


・この夏のわれの賜物
 七歳の手作りクッキー絵手紙一通 
・子らは子のくらしのありて
 遠くよりただ思ふのみ見守るのみに
・わが作りし弁当持参で早朝を
 元気でけふも夫出勤す


第2歌集
「短歌人」同人
2025年6月12日発行
四六判上製カバー装194頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
辻和之歌集
『夏の雪』


辻和之の短歌の文体が誰にも似ていない。平仮名が多用されているので、先行者の会津八一や村木道彦を連想する人もいるかもしれないが、その短歌作品が内包している世界はまったく異なる。
(藤原龍一郎・栞より)


・雪あれは灰かそれともみわかねど
 みわかぬままのひとひらぞふる
・もうしんでもういきかへりそれでよい
 なんだかぼくら四季のやうだね
・詩はどこまでも沈黙的で
 沈黙はどこまでも詩的だとおもう


第1歌集
「短歌人」同人
2025年6月20日発行
A5判並製表紙装118頁+栞文4頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
久我田鶴子著
『冬潮を航く
 三好直太の歌

歌誌「地中海」創刊に参加、
ギリシャ船に乗り込み六年余。
「自分のおもう存分のちからを揮い、
考え、表現するための立場をつねに
ふんだんに満喫していた」と語りつつ、
五十一歳で早逝した三好直太。
没後半世紀を経て、
35のキーワードにより
その魅力を探る。

【資料】
「涯に生く」159首
(合同歌集『群』収録)
年譜(三好たか枝編)


地中海叢書第962篇
2025年4月18日発行
四六判並製カバー装140頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
滝本賢太郎歌集
『月の裏側』


戦後短歌からの現代短歌へと流れる水脈のひとつに、都市生活を背景とした知的抒情の系譜がある。独文学者、滝本の歌はこの系譜を正統的に受けつぐ端正なたたずまいをもちつつ、知に対する含羞、俗への共感と親和性といったアンビバレントな振幅を見せる。本歌集の最大の魅力はこの揺れ幅にあるだろう。定まらぬ振幅を通して、生きづらい現代の市井を生きる学究の、時に軽妙なユーモアさえ帯びた葛藤や苦悶や憤怒の声が妙に生々しく、リアルに聴こえてくるのである。
(島田修三)


・分析のすずしさに指添わせつつ
 われも踏みゆく言語野の冬
・ソロキャンプとさして変わらぬ生活で
 火を焚くごとく翻訳をなす
・政治性も緩い弾丸でたった一度
 死んだくらいで調子に乗るな
・春香園[しゅんこうえん]、金春[こんぱる]、
 你好[ニイハオ]、歓迎[ホアンヨン]
 わが町は餃子に翼を授く
・スナックの扉を越えて聴こゆるは
 旅情のごとき島倉千代子


第1歌集
まひる野叢書第417篇
2025年2月26日発行
四六判上製カバー装204頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
森澤真理歌集
『地吹雪と輪転機

     A newspaperwoman


北緯38度線が通る新潟で詠う─

女性記者のパイオニアとして走り続けてきた軌跡と豊かな抒情の織りなす一冊は、時代の証言としても光を放ち続けるだろう。
(松村由利子・栞より)

【栞】
柔らかくイマジン/恩田英明
取材現場と豊かな抒情/松村由利子
サブカルチャーへの視点/藤原龍一郎


・打ちつけの吹雪の港あかあかと
 灯ともし島は新聞を待つ
・輪転機響動【どよ】もす未明
 手まねにて求めし刷り出しほのかに温し
・フェミニズム思想で掬えぬものもある
 超ミニの下かがやく素足
・語らずに去りし数多の女性記者
 みな佳き声を持ちてありしよ
・河越えて中国領に入りしとき
 ラジオは歌を掬いぬImagine…


第1歌集
「短歌人」同人
2025年2月8日 第1刷発行
2025年4月24日 第2刷発行
四六判並製カバー装172頁+栞文12頁
定価:本体2200円[税別]
装幀/真田幸治